人生を変える洋楽

誰かの人生を変えるような楽曲の歌詞を考察・解説するブログ

ベット・ミドラーの「The Rose」を考察してみた

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Some say love it is a river
That drowns the tender reed
Some say love it is a razor
That leaves your soul to bleed
Some say love it is a hunger
An endless aching need
I say love it is a flower
And you it's only seed

It's the heart afraid of breaking
That never learns to dance
It's the dream afraid of waking
That never takes the chance
It's the one who won't be taken
Who cannot seem to give
And the soul afraid of dyin'
That never learns to live

 

When the night has been too lonely
And the road has been too long
And you think that love is only
For the lucky and the strong

Just remember in the winter
Far beneath the bitter snows
Lies the seed that with the sun's love
In the spring becomes the rose

<解説>

まずイントロが素晴らしい。ピアノでCとGの5度音をローテンポで鳴らし続けているだけだが、落ち着いた空気の中に1本の強い意志が貫かれている、という曲全体の色合いをイントロからしっかり表現している。

 

前提として、この曲でいう愛というのは、神の愛や博愛や人類愛といった抽象的で高潔な愛の意味ではなく、特定の人やものに対する日常的な愛を指している。それゆえ、リスナーの日々に寄り添った言葉が紡がれている。

 

Aメロでは「愛」に様々な比喩を使っている。

誰かが言う 愛はか弱い葦を溺れさせる川だと

reedは葦。韻を踏むためにこの言葉を選択しているとは思うが、少なからず、パスカルの「人間は考える葦である」を意識しているに違いない。弱い葦というのは人間の喩えだ。川沿いに生えている葦は川の水がないと生きていけない。だが、川が増水し流れが速くなることで腐る葦や流される葦が出てくる。

人間という弱い葦から、考えるという理性を奪い、堕落させ飲み込んでしまう。一方で溺れるように浸かっていないと逆に生きてゆけない。まさに依存である。

愛は魂を流血させる剃刀の刃だ

愛は飢えであり果てしなく疼く欲求だ

 

Aメロの最後で「私」の考えが語られる。

愛というのは花で あなたはそのたった一つの種だ

only

たった一つという言葉を使っている。一人一人咲かせられる花(薔薇)は違うのだけど、その貴い花を咲かせられるのはその人(一つの種)だけ、という意味なのだろう。

 

最初の3つの例えはどれも愛を強く酷なものだと考えている。川、剃刀、飢え、どれも人にとって脅威となり得るものだ。それに対し、「私」は愛を花という弱く儚いものだと考えている。この違いはなんだろう。

依存させ傷つけ渇望させる愛は外から内に向かっている。心の外から内に働きかけさせてしまっている。愛という心の外にある何かが、自分を依存させ傷つけ渇望させる。

故にそれは違うんだ、と。愛は外側にはない。内から外に向かうものだ。愛は、自分という種が外に向かって花を咲かせようとするかのように、誰かに与え魅せてゆくもの。ベクトルが違う、これが最初のAメロが言いたかったことだ。

 

この曲の真価は2回目のAメロの歌詞にある。

 

壊れることを恐れる心は踊れない

覚めることを恐れる夢はチャンスを掴み取れない

奪われることを恐れる者は与える喜びを知らない

死ぬことを恐れる魂は生きていない(のと等しい)

 

言葉選びが美しくて聞く人の心を魅了する歌詞だ。恐怖という感情の扉を、決して小さくはないその扉をそっと押し開けて、一歩踏み出すことの大切さを教えてくれる。

 

 

雨風に打たれて、痛くて悲しくて、世界のどこにも味方がいないような気分になる夜があるかもしれない。全てが寒くて仕方なくて、何も考えたくない、何もかも諦めたい、そう思ってしまうかもしれない。もうどうでも良いんだ、ここで人生を終わらせてしまおう...らしくない考えが頭をよぎるかもしれない。生きていくのに希望が見えないそんな夜。

あるよね。分かる。すごく分かる。

怖いよね。寂しいよね。虚しいよね。世界も人々も全てが敵に感じた夜はすごくすごく苦しいよね。自分が誰よりも弱いちっぽけな存在に思えてくるよね。もう、どこにも辿り着かないような気がするよね。

そんな時は、目を閉じて、力を抜こう。今はそれだけで良い。この時間を静かに生きてゆければそれで良い。流れに身を任せて。大丈夫、あなたの内側には今この瞬間もちゃんと貴い「種」がある。愛の種はあなたの中にある。

そうして、いつか、どこかのタイミングで、一歩踏み出せる日を待とう。いつか、外に向かって踏み出したいと思う日が来る。扉を開けるその日のために、今は種として土の中で静かに待とう。あなたの中にそれはちゃんとある。花開く時が必ず来る。

心を落ち着けて。

あなたの内側に秘めたもの(種)は大きい。冬の今はそれを秘めているだけかもしれないけれど、いつかそれが外に向かって花開く日が来る。決して今じゃなくて良い。いつか、あなたの愛(薔薇)を内から外に向かって、咲かせる日が必ず来る。その日が来るまで、ゆっくりじっくり自分を信じて待とう。今この瞬間は自分を思いっきり、抱きしめてあげよう。